お待たせしました!
坂本文郎氏による2024年度吹奏楽コンクール課題曲の楽曲解説です。
指揮者の目線から見たスコアの分析です。
練習にお役立てください。
【坂本氏より】
小編成で取り上げやすい曲と感じられた方が多いと思います。
盛り上がりが少ない代わりに淡々と美しく仕上げる印象が強いように感じられます。
しかし、ほとんどの部分の1拍だけを取り上げても音の数が多く、それをしっかり把握せずに少ない人数で演奏するのはかなり注意が必要です。
ピアノだけで演奏すると考えると音の数が増えると広がりが出ますが、合奏体の場合は声部が広がると担当の奏者の数が減るために逆に音が薄くなると考えなくてはなりません。
このことを頭の片隅に置いてください。この後、曲の解説は音の種類を中心に考えていきたいと思います。
- 冒頭~Aまで
・まずは最初の3小節を見てみましょう。
1小節目は1拍目がEs音のみ、2拍目は半音のD音を加えた2声、3拍目はEs音にB,C音が加わった3声、4拍目はC音がB音に移動して2声になります。
2小節1拍目はEs、B音を基盤にAs音を加えた3声、2拍目はAsがG音に移動して3声のままです。
ポイント!
①1小節2拍目は半音でぶつかりますが、2小節1拍目に向けて音を広げていく。
②4分音符で動くCl.3,A.Cl,T.Saxは長い音符のパートより大きいバランスでクリアーする。
③2小節3拍目から3小節へは音の数が「As、B、C、Des、Es、F音」の6声になり「As-Dur」の音階のようです。響きを作るのは困難ですが、ここまでの流れの結論のような形になっていますので上手く響かせる必要があります。ここは「As・C・Es」のA♭コードと「B・Des・F」のB♭mコードに分けて響きを作る。
・4小節目からAまでを見てみましょう。
1拍目が再びEs音のみで、2、3拍は4分と8分の動きで3声になっています。5小節の最初の2拍は4分と3連符の動きだけの2声⇒3声ですが、3拍目は先ほど同様に「As、C、Es、G、B」の5声、4拍目以降は「As、C、Es」はそのままでG⇒F、B⇒Asに変化して上下にB音がある形です。Fm₇/B♭コードの5声になります。
ここが結論になります。「As、C、Es」の3音と「B、F」音の完全5度に分けて響きを作りましょう。
- A~Bまで
この部分は3小節×2、その後5拍、3拍、8拍の5つの部分に分けて考えてください。
・1小節2拍目までユニゾン、3,4拍と2小節1拍目は2声。2拍目から3声となり4拍目には再び2声に戻ります。
・3〜5小節も最初の2拍がユニゾン、4小節1拍目までが2声、2拍目が3声、3拍目〜 5小節1拍目までが4声、2拍目が3声、3拍目が4声です。
・この後6小節1〜2拍がユニゾン、7小節2拍目と8小節2拍目もユニゾンです。合計5回のユニゾンがありそこから3声4声に膨らむ構造になっています。
・前述したように声部が増えるほど演奏者の数が減ります。ユニゾン部分を起点に、滑らかな進行になっているかどうかがポイントです。
- B~Cまで
・1小節1拍目と1,3小節1拍目裏からの8分音符3つまではユニゾンのみです。1小節3拍目~2小節と3小節3拍目~4小節は、それぞれがユニゾンの形で動いて2声・3声になっています。2小節3~4拍目だけは和声的な響きが強調されます。ここの響きは丁寧に作ってください。
・5~10小節(アウフタクト含む)は以下のグループに分けて見てみましょう。
*グループ1:木管群
*グループ2:Fg・Cl・T.Sax・Trp・Euph
グループ1のスケール的な動きについては、5小節2拍目まではユニゾンです。3拍目から2声になり、グループ2を加えて3声の動きに広がります。グループ1のスラーが途切れるとまたユニゾンに戻りグループ2との2声に、再び二つに分かれ3声にという動きを繰り返します。
→このパートだけ取り上げて、ユニゾンから和声的になる流れのバランスを確認してください。
→グループ1が2声に分かれるときにcresc.で音が広がっていますので分かれる場所を把握したうえで音量調整すると良いでしょう。
・Trbは4小節目までユニゾンですが、5小節目から突然3声に分かれます。Trb2の音はグループ2と被さる部分が多いので音量の問題はありませんが、Trb1は1パートしか音がありませんし、Trb3もバスパートと被さる音以外は単独になります。
・7小節3拍目からは全体の音を見ると4声以上の複雑な和音が続きます。8小節1拍目はFm、10小節1拍目はGと、2ヶ所だけは素直な三和音ですので、ここを綺麗に響かせましょう。10小節1拍目のD音はTrb1にしかなくH音は多すぎると思われますので、バランス調整をしてください。私はTrb2とEupのH音は必要ないのではないかと思っています。
- C~Dまで
・アウフタクトから6小節目までを考えてみましょう。
①アウフタクトの頭のG音、2小節3拍目裏のB音、4小節3拍目裏のCis音は共にユニゾンです。動きは8分音符ですが、曲の冒頭の構造とよく似ています。頭のユニゾンから長2度下に広げ、そのまま重奏の形で推移しています。(5~6小節はそこにSax等の3声の3連符やTrbとバスによる4声の和音が加わっています。)ユニゾンから和声に進行する流れの確認をしっかり行ってください。
②また2小節1⇒2拍目はTrp3とHrn1,2がAs⇒G音に移動してE♭のコードに、4小節目も同様にCes⇒Bと移動してG♭のコードに解決しています。
・7~12小節は、以下のグループに分けて特徴を記載してみます。
*グループ1:Fl、Picc、Ob、Cl→ユニゾンの連符
*グループ2:Trp、ASax→2声での進行
*グループ3:Cl、TSax、Hrn→7〜8小節はユニゾン
*グループ4:Fg、BassCl、BarSax、Trb、Eup、Tuba、Cb→3声で進行
・10〜12小節ではグループ3とグループ4は和声的なグループになりますので、響きを作りたいところです。しかしグループ1はユニゾンで人数も多いと思われますので、バランスをどうするか考えたいところです。11〜12小節のPercは主張できるように気を配ってください。
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