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坂本文郎氏による2023年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ マーチ 「ペガサスの夢」の楽曲分析です。
F~G (Trio後半1回目)
・メロディはユニゾンですが、アウフタクト~4小節頭までと4小節4拍目~8小節目頭までは音色が変わり、8小節3拍目からは二つのメロディが合同する形になっています。ユニゾンですので音程が重要なのは言うまでもありません。問題は4小節4拍目からのFl・Obのメロディです。Obがない場合、Flは音域が低すぎてFg・BCl・ASax2・TSax・Hrnの和声に埋もれてしまうことが考えられます。※のObを例えばTrpのミュート等に変更できないだろうかと考えてしまいます。
・1、2小節のEupは注意が必要です。音自体はACl・TSaxと同じですし、F音はHrnも奏しています。2小節とも4拍目に舌突きがあるのはEupだけです。
・最初の4小節はHrnのF音とACl・TSax・Eupとメロディ、Bassで3声の和声を作っています。バランスに気を付けてください。
・5小節からはHrnとASax2・TSaxが同調して和声を作っていきます。常に和声感を感じさせる演奏をしてください。
・9・10小節のEupは1・2小節と似た形ですが、Bassに対応しています。また13~16小節はFg・ACl・TSax・Hrn3と同じです。メロディの強さは10~12小節が最も厚くなっています。上手にバランスを取ってください。
G~H (Trio前半2回目)
・Trioは前半と後半がそれぞれ3回出てきます。その3回の違いをしっかり表現してください。
・メロディはアウフタクト・8&10&12小節3~6拍目の4箇所がユニゾン、その他は2声になっています。先ずはユニゾン部分が2声部分より強く聴こえないかが問題です。
・次にメロディ2声部分の上は13パート2オクターヴとかなり広がりと人数があるのに対し、下は4パート1オクターヴになっています。このバランスを取るだけでも大変ですが、1~4小節頭と6小節のTrp3に注目してください。3声目を作るような役割なのですが1パートのみです。そうかと思うと4小節4拍目~5小節は数の多いメロディの上に合流しています。1パートだけでバランスが取れるとは思いませんので、人数調整やパートの入れ替えによる補強が必要と思われます。
・9小節からのFg・Hrnは対旋律の形で演奏しています。特に9&11の3~6拍の音型はメロディと1小節ズレた形ですので、音量的に大きな差が出るようにしないでください。
・和声はB♭系・E♭・Cm系・F系の4種類しかありません。これはE部分の後半も同じです。単純な和声だけに確実に響きを作りましょう。
・4小節4拍目のB音と10小節1拍目のD音はBassパートにしかありません。しっかり和音を支えてください。
H~I (Trio後半2回目)
・F部分でのCl・ASaxのメロディは、楽器がTrpに、ユニゾンが1小節は2声に2小節は3声に、強弱がmpからfに変わっています。金管なので音量はあるかもしれませんが、人数的にはかなり減っていますので、広がりが出たかどうか検証してください。
・1小節のB♭/D、2小節のF/CのコードはTrb・Eup・Tuba・Cbではっきりと提示されます。単純な和声です。響きを大切にしてください。
・4小節までHrnはF音、5~6小節はG音、7~8小節はD音のユニゾンになっています。marcatoで表現するためには8分音符を短めの音で印象付けてください。
・3小節目はB音とF音しかありません。できるだけ同じ程度の音量にするか、HrnのF音のオクターヴを少し強調してください。
・4小節4拍目からの音色を変える役割はTrbが担っています。F部分は最初に比べて音量が減りそうですが、ここはTrbのユニゾンですのでかなりはっきり聴こえるでしょう。F部分と演奏を比較して、違和感がないかどうか検討してください。
・6小節5拍目からTrbは3声になります。7小節はEupを加えて3声になっています。ここの響きがしっかり広がるようにしたいのですが、前述したようにユニゾンの方が人数も多く強くなってしまうでしょう。
・8小節からメロディが多数の木管に移ります。8・10・12の3~6拍目の4箇所がユニゾン、13~14小節が3声、その他は2声になっています。この作りはG部分と似ています。ユニゾンとの音量のバランスに気を付けてください。
・9~15小節のHrnを見ると和声的に変わっています。Trbも和声を担当しています。G部分より若干複雑な和音ですが、簡潔な和音ですので響きをしっかり感じてください。
・15~16小節はHrnがユニゾンになってcrescしています。SDと同調してしっかりcrescしてください。molto crescでffに向かいましょう。
I~J
・この曲のクライマックスに当たる部分で、Trioの繰り返しの間に挿入されています。特に特徴的なのは多用されている減三和音(ディミニッシュコード)です。構成音が4種になっている場合が多く各音の距離が短三度と等距離になっています。まず各音の音量をできるだけ等しくしてください。不安定な和音ですが、等しくなればなる程安定して響きます。このコードの後にシンプルな和音に解決します。解決した印象を与えるために、丁寧に和声作りをしてください。クライマックス部分なだけに乱暴にならないようにしましょう。
・最初の減三和音は1~3小節です。次にG♭コードに解決しますが、4小節の頭はFl・Picc・Ob・EsCl・Clのトリル後の音以外はB音のみです。トリル⇒装飾音⇒GesとDes…この進行ですので丁寧に瞬間的な和音を作ってください。
・次に5~7小節です。上と同じでトリルのパートが最後の音を出した8小節頭の瞬間に和音が解決します。
・9・11・13小節も減三和音です。例えば10小節は付点2分音符のGes音とトリル後のEs音が瞬間的にE♭mのコードを作りその後ASax2・TSax・Hrnが同じ構成音で和声を演出する仕組みです。12小節も同じ形です。14小節もほぼ同じですがASax1とTrp1がCes音に加わり、Trp2がGes音で参加しているのが違いでしょうか。
・解決の瞬間はトリル後の8分音符で作られることが大変重要です。
・Fl・Picc・Ob・EsCl・Clは同じ動きです。C部分が再現されたような動きになっています。最初の8小節は2声になっています。上下のバランスを取りましょう。9~14小節頭はFl・Picc・Obがトリルの動き、練習番号Cで始まったのと同じ16分と8分音符のリズムはEsCl・Clに分かれて担当しています。各部の人数は減ることになりますが、ユニゾンになることで補っています。14小節3拍目~16小節頭は合流してユニゾンで動いています。
この部分のトリルはどうすれば揃うでしょうか?適当に演奏しないで楽譜にしてしまうのが良いと思われます。3小節目のF音のトリルで例を挙げますと、最初の3拍はF&G音を16分音符で、後半の3拍は7連符か5連符の形にして最後の2音を装飾音のEs・F音にします。できれば7連符にしたいところですが、なかなか揃わなければ無理することはありません。とにかく次の小節の頭を確実に揃えることが最優先です。
・ASax・TSax・Hrnは同じ仲間として動きを見てみましょう。最初の3小節はHrnがTrp3にしかないF音を主体的に奏しています。4小節からSaxに同調します。4小節はSax全体でメロディのような動きをし、HrnはGes音で2声にしています。5~7小節は全員Ges音です。強すぎると感じたら削るべきだと思います。8小節からはこのグループにTrpが加わります。13小節までTrpはユニゾンでASax1と同じ動き、残りの2声部をASax2・TSax・Hrnが奏しています。
・1~3小節頭までTrp・Trb・EupにBassのFg・ACl・BCl ・BarSax・Tuba・Cbが加わって4音で構成される減三和音を奏しています。前述したようにできるだけ等しい音量で演奏してください。5~7小節頭も同様です。3小節3拍目~4小節と7小節3拍目~8小節はTrpを除くパートがユニゾンで演奏します。メロディの役割でもありますので強くていいのですが特に4小節のSax・Hrnとの対比には気を付けてください。
・11~13のdim.は確実に演奏しましょう。Cl・Sax・Hrnは10小節と12小節の音量を、それ以外のパートは11小節と13小節の音量をdim.させれば自然に形が作られると思います。14小節の頭を谷にして一斉にcrescしてください。ユニゾン中心から14~16小節で3声の和声を作るので十分に音が広がるように気を付けましょう。
・14小節1拍目でGes音を奏しているのはTrp2だけです。周囲の音が分厚いのでしっかり鳴らしてください。
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