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坂本文郎氏による2023年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ 行進曲 「煌めきの朝」の楽曲分析です。
Kアウフタクト~L
・Eroicoとは見慣れない発想記号ですが、「勇敢に」という意味です。次のLにも発想記号が付いていますね。ここからの部分がコーダに当たると考えていいでしょう。
・アウフタクト~8小節頭までACl・TSax・Trb・Eupのメロディはユニゾンです。力強さを表現したいとは感じますが、音程は丁寧に合わせてください。AClがない場合は、Cl全体も別のユニゾンの動きですので補強するようにしましょう。
・同じく8小節目頭までFl・Ob・Cl・ASaxが上行形のユニゾン、Fg・BCl・BarSax・Tuba・Cbが下行形のユニゾン、Trp・Hrnが和声的と役割は違いますがリズムは皆同じです。まず上行形と下行形のバランスは同じに整え、その上で和声がしっかり聴こえるか確認してください。ただし、1&2小節と5&6小節のHrn4のそれぞれGis音・Fis音は弱めのほうが良いでしょう。
・8小節2拍目~10小節のOb・Cl・ASaxはユニゾンです。強弱がmpで11小節から3声に分かれてのcrescになっていることを考えると人数を削って音程のリスクを減らした方が良いでしょう。
・11~12小節はOb・Cl・ASaxに加えてTrpも加わり3声のcrescになっています。ClとTrpは3声の動き、ObとASax1が一番上、Cl3とASax2は下のパートです。11小節は真ん中のC⇒Hの動きが少ないので気を付けましょう。
・12小節2拍目裏はE音が特に多く、C音はCl3・ASax2・Trp3・Hrn2と少なくなります。問題なのはHrn4のA音です。一人にならないよう気を付けてください。
・13小節頭は2声ですが裏の16分音符と2拍目は3声です。メロディラインのここもH音が特に多いと感じますが、さらにHrnの和声に注目するとA音がHrn2のみになっています。
・14小節ではTrbで和声の補強がされるのでA・H・Dis音は助かりますが、Hrn4のFis音は足らなくなります。
・15小節のritは2拍目スタートです。ここでスタートするということは実質的に遅くなるのは16小節からと考えていいと思います。さらにあまりやり過ぎないように気を付けてください。
L~最後
・Vigorosoもあまり見たことのない発想記号ですね。「活気ある」と訳して良いでしょうか。
・華やかに演奏したいとは思いますが、そのためにはTrpを前面に押し出す必要があると思います。問題は1~28小節の間、和声的な動きがTrpと後打ちのHrnにしかないことです。まずはTrpとHrnだけを取り上げて聴いてください。音量や響きを確認したらFl・Picc・Ob・EsCl・Cl・ASax・Vib・Glockenのユニゾン(グループ①)の音量と比較しましょう。次のグループはFg・ACl・TSax・Trb・Eupの対旋律(グループ②)です。BCl・BarSax・Tuba・CbにBDとCymbを加えたBass(グループ③)とも比較してください。fのVigorosoの中で適正なバランスを保ち和声感を残すのはかなり難しいでしょう。解決法があるとすれば、ここでは我慢してユニゾンを抑えめにし、最後の4小節が和声的になるので、ここをクライマックスと考えるしかないと思われます。
・Trp・Hrnの響きを少しでも生かす方法について考えてみます。
・冒頭のTrpの3声は大切です。しっかり響かせてください。
・1小節2拍目裏と2小節頭は2声になりますが1拍目の裏から3声に戻ります。ここでは瞬間的にHrn3だけがD音になります。
・4小節の2つ目の音からTrpはユニゾン⇒2声⇒3声と広がります。この小節は他がE音・C音を大量に奏していますので、A音が薄くなります。
・6小節のG音はHrn4だけで、他にもTrp2とHrn3のCis音はかなり少ないでしょう。
・8小節はD音だらけのためHrn1&3のF音とHrn4のA音はこれだけしかありません。
・10小節はB音だらけでTrp1の音の動きやHrn1のF音、Hrn2のD音、Trp3やHrn4のG音が心配です。
・12小節はA音過多のためTrp1とHrn2のC音、Trp3やHrn1&3のE音も問題です。
・13小節はHrnが4声なので、1拍目はHrn3のC音、2拍目はHrn2のA音が単独になります。14小節も同様で両拍ともHrn3のC音が単独です。
・16小節はHrn・Trpで不安定な4声の和音になっています。ACl・TSax・Trb・EupのH音が強すぎますので、Trp1のDis⇒D⇒Dis音(単独です。上のパートだけに響かせたい音です。)、Hrn1&3のF音、Trp3とHrn4のG音は不足します。
・17小節2拍目裏~18小節頭のTrpは2声になります。その後は3声に戻ります。
・18小節1拍目裏のHrn3のD音は単独です。2拍目頭のTrp1のF音も単独です。
・20&22小節の注意は4&6小節と同じです。
・24小節は8小節同様D音だらけのためHrn1&3のF音とHrn4のA音はこれだけしかありません。2拍目のTrpはユニゾンですが最後の16分音符が問題です。経過音と言ってしまえば問題ないのかもしれませんがTrp1&2がG音、Trp3がE音ではっきりとHrnとぶつかってしまいます。
・25小節2拍目のTrp1のB音は単独です。
・26小節はユニゾンのパートがF音とC音のためTrp2やHrn4のAs音が少なくなっています。
・28小節はユニゾンのパートがC音とE音のためTrp2やHrn2&4にあるA音が少なくなっています。さらに2拍目裏はTrp3とHrn4のG音への変化が聴き取りにくいでしょう。
・29&30小節の全体での和声の響きを広げられるようしっかりと練習してください。
・31小節はスケール以外のパートにCコードが残ります。和声の人数が減った時に減衰しすぎないよう練習してください。ラストの和音もCコードのままです。アクセントが入るようにしてください。
・ラスト2小節でTrb3のE音は弱めにしましょう。響きを殺しかねません。
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