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坂本文郎氏による2023年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅱ:ポロネーズとアリア~吹奏楽のために~の楽曲分析です。
冒頭~Aまで
・音型毎に見ていきましょう。1小節目のHrnとEup、2小節目のHrnとASaxはユニゾンです。2~3小節のTrbとEupは別の動きですがユニゾンになっています。3小節目3拍目裏はそれらすべてのパートがB音のアクセントです。4小節目からそれらのパートにBassを担当している楽器が加わって同じ音型になっていますが、ここで3声に分かれます。このパートだけ取り上げて、自然な流れに聴こえるのか点検してください。
・次に、2小節目までのTrpとClに注目してください。それぞれ別の動きですが、共にユニゾンです。3小節目から動きが同じになりますが、やはり3声に分かれます。3~4小節でB音のトリルを奏しているPicc・Fl・Obもユニゾンです。そしてこれらのパートが5小節目1拍目裏からユニゾンになります。これも自然な流れに聴こえるか、このパートだけで点検する必要があります。
・①②の点検が終わったら、その二つとPercを入れて合奏します。3つのバランスがしっかりとれるよう、気に入る音を探ってください。特に4小節目と5小節目頭の音はグループ②がユニゾンになりますので、Percのcrescのやりすぎなどがあると和声の響きを殺してしまう可能性があります。5小節目1拍目裏と2拍目の頭がcrescからの到達点になります。Ddurのコードを美しく鳴らしてください。
A~Bまで
・1小節目のアウフタクトはBassとTimpのD音をしっかり響かしてください。Tom-Tomを出しすぎないようにしましょう。
・2小節目まではポロネーズのリズムを前述のBassを含めてしっかり提示してください。1拍目の16分音符がつぶれてしまわないように、2小節目のdecrescの形が基本形だと考えて1拍目に強拍が来るように提示してください。TrbとTrpの和声の響きを聴かせることも大切です。
・3小節目からTSax・Fg・Hrn・Eupによるメロディが始まりますが、ここでもTrbによるポロネーズのリズムと和声がしっかり聴こえるようにしてください。ここから先は、ユニゾンと和声のバランスが重要になると思われます。
・6小節目は和声にTrpとPicc・Flが加わります。この和音はPicc・Flが高音で同一の音を吹いており、さらにTrp・Trbも同じ音が一番上になっています。下のパートと和音のバランスが取れているかチェックしてください。
・6小節目のPicc・Flのトリルは小節内で終わっています。D音で終わるように指示しましょう。3拍目の裏が管楽器は全てD音で終わっていることを考えると、トリルは8分音符分だけにして裏は他と同じようにD音の8分音符で終わったほうがスッキリするかもしれません。
・6小節目3拍目裏は一つ不思議に思う点があります。全体がD音なのにTimpだけB音になっている点です。和声的に聞こえさせるのは困難でしょう。
・7~10小節もこれまで同様メロディのユニゾンとHrn・Trbの和声のバランスに気を付けましょう。10小節目は1拍目を強拍にするポロネーズの形が崩れますが、Bassを表に出し、Percと共に奏するcrescに乗せていきましょう。ここで違いを出すならば、それまでの部分はしっかりポロネーズ(1拍目が強拍)の形を保ちましょう。
B~Cまで
・アウフタクトも含め最初の4小節に注目してください。メロディがかなり多くなっています。その他はTrpとHrnがそれぞれユニゾンで別の動きを、それにBassがやはりユニゾンで動きます。そんな中Trbだけが和声的になっていますね。3小節目からはTrpとHrnも和声的になりますが、最初の2小節はメロディの人数を調整しないとTrbの和声が響きにくくなるでしょう。
・4小節目はTrb・Trp・Hrnのリズムがそろいます。decrescがついていることもあり、1拍目の強拍をはっきりと表現してください。2拍目のバランスですが、D音がメロディのユニゾンの関係もありD音がかなり多くなっています。Trp3とHrn1にあるD音はかなり薄くてもいいかもしれません。
・4小節目のBassのdecrescですが、私が演奏するならポロネーズのリズムパートとは少し違う方法を採ります。2拍目頭までは強いままにし、その後decrescで3拍目裏はmpかpくらいを意識します。5小節目から半音で下行しますので、mfまで音量を戻すような演奏が良い気がします。
・5~6小節はOb・Cl・ASaxによるメロディのユニゾン、Hrnのユニゾン、Bassの半音下行形とTrbの和声&ポロネーズのリズムの4つに分かれています。ここは比較的それぞれのバランスが取りやすいと思いますが、6小節目2拍目裏からメロディユニゾンが急増します。HrnがTrbに加わりますが、Bassの人数も変わっておらず人数調整が必要になるのではないかと考えます。
・6小節目のcrescは2拍目裏から一斉に行うと良いと思います。
・8小節目3拍目の最後の音は明らかにバランスに問題があります。Hrn3とTrb1以外は全てG音です。2パートだけがB音を演奏していますので、バランスを調整してください。
C~Dまで
・まずPercですが、4小節目までのCastanets、5小節目からのTamburineは音色の変化がクリアに聴こえるようにしてください。Castanetsに比べTamburineは管楽器に埋もれてしまいがちになりますが、そのタイミングでメロディがユニゾンになり人数が増えます。
・1~2小節はメロディが初めて2声になります。これは大きな変化ですので、弱奏しすぎずに変化したことを主張しましょう。さらに3小節目アウフタクトからは3声になります。Cl1&2はFl・Picc・Obが同じ動きですが、Cl3は1パートだけですので埋もれないように気を付けてください。
・4小節目2~3拍目のBassはcrescの形を主張しましょう。
・5~6小節のメロディは人数が増えた上にユニゾンに戻ります。mfでしかないのに突然強くなった印象にならないよう気を付けてください。
・7小節目3拍目の4分音符はC₇のコードです。素直な和音ですので綺麗に響かせてください。
・8小節目の3連符ですが、1・2拍目に比べて3拍目が少なくなっています。音が高くなるので大丈夫だとは思いますが、しぼんだ印象になっていないか点検してください。
・8小節目の和音はD音・G音に対してA音がTrp2だけになっています。バランスを点検してください。
・9小節目の付点2分音符のパートですが、Clにだけfpが付いていません。前の小節からのタイなのでそうなっているのでしょうが、ここはfpの処理をした方が良いように思います。DコードのA音抜きになっているのです。そのA音はリズムを受け持つTrpとTrbの中でTrp2とTrb3だけが奏しています。Fl・Piccの半音階やBassの2拍目からの順次進行を聴かせるためにも和声を響かせるためにも、この処理は行ってください。
D~Eまで
・ここから抒情的なアリアに至る前の最初のクライマックスに向かいます。今までよりも動きが複雑になっています。スコアを参照して同じリズムの動きに注目してください。最初は違っても途中から同じ動きになるパートもあるでしょう。そして動き別に整理したら、ユニゾンになっているのか2声なのか3声なのか点検してください。例えば同じ動きでユニゾンから2声に変化した場合、気持ちは華やかに広げる印象になりますが、実際に奏者の人数は半分になります。和声的になることで響きは広がりますが、音の力強さは絞んでしまいます。このことを頭の片隅に入れて、どうすれば気に入った合奏になっていくのか試してください。
・1小節目にいきなり困難な部分があります。Fl・PiccのG-A音のトリルは最も困難なトリルと言って差し支えありません。Flは左手小指と右手人差し指・中指の3本の指をPiccは右手中指を除いた2本の指を同時に動かさなければなりません。しかも高音域で、メロディや和声の邪魔をしないように演奏するのはかなり難しいでしょう。あまり回数を増やさず、人数も絞ったほうが良いように思います。
①1~7小節のメロディはClとTrpのユニゾンで始まります。途中2小節目3拍目裏からFl・Piccも加わりますが、3小節目2拍目から急に3声になります。5小節目のアウフタクトからOb・Cl・A&TSaxのユニゾンになり6小節目2拍目裏からSaxが抜けてFl・Piccが加わります。音が薄くなりTrpが7小節目3拍目裏から続けますが、8小節目は2声になります。特に8小節目1拍目のTrp3が奏しているEs音はG音が多い中で1パートのみしかありません。TrpからFl・Picc・Ob・Cl・ASaxがユニゾンで繋げますが、ここは音量の段差が最も激しいと思われます。
②1小節目2拍目からのA&TSaxとHrnの対旋律はユニゾンで始まり2小節目2拍目で2声になります。
③Trbの和声は3声で続けられます。3小節目にSaxとHrnがリズムを奏しながら3声で加わり、4小節目はTrbも3声のままリズムを奏します。5~6小節はリズムの形のままTrbとEupが三和音を奏で、7小節目にHrnが加わります。8小節目はレガートでHrnの和声だけになります。1拍目のHrn2のB音は1パートだけですのでバランスに注意してください。9小節目は和声にACl・TSax・Trbが加わります。特に1拍目のEsコードは綺麗に鳴らしてください。
④BassはBDと共にポロネーズのリズムを作りますが、③パートと一緒に和声を作りますのでバランスを取ってください。4小節目のdecrescはBの4小節目と同様、2拍目裏からのdecrescにすると良いでしょう。5小節目からはやはり半音の下行形になりますので、しっかり主張してください。
⑤PercはまずSDに注目してください。ポロネーズのリズムを7小節も続けるのはSDだけです。さらに4小節目にTom-Tomが強調します。全体が静かになってくる部分、6~7小節にかけてのSus Cymbのcrescは独自の動きですからしっかり主張してください。
・①~⑤のパートはそれぞれのパートでバランスや流れを検討しましょう。その上で、少しずつ別パートを加え、理想的な合奏を形成してください。
・5~7小節の和声はBassの半音進行もあって複雑な響きになっています。和声の変化を検討してください。
・10小節目は全体のリズムが同じになります。2拍目表まではFコードの3声ですが、A音の厚さが変わりますので響きを求めて調整してください。2拍目裏からは上行形が2声、下行形はGesからCまで下がる音しかありません。上行形はE音から上がるパートに比べてGis音スタートのパートがCl3・ACl・ASax2・TSax・Trp3・Trb1,2,3で若干少なめです。上下のバランスが同じくらいの音量を目指してください。
・10小節目のコンデンススコアを見るとF音の連続があります。調べてみるとTimpだけです。和声と考えるには苦しいので、打音として捉えた方が良いでしょう。
E~Fまで
・Pomposo(華麗に)とD部分をさらに広げていく構造になっています。さらにユニゾン、2声、3声が目まぐるしく変化していきます。
①1~4小節のFl・Picc・Obのトリルを①としましょう。トリルは6連符のつもりで演奏し、最後の1拍は5連符または記譜したら8分音符の形にして、B音で終わるようにしましょう。その方が3拍目の6連符のスケールに無理なく移動できるでしょう。
②ClとTrpは最初の音が3声、2拍目裏の8分音符は2声、3拍目からユニゾンになり、4小節目1拍目裏から再び2声になります。声部が少なくなればなるほど音は増幅して聴こえます。特にユニゾンは強く感じますので、人数を減らして音程のリスクも回避してください。特に3小節目はClの音が高いので特に気を付けてください。また、AClはTrbと同じリズムで動いていますが、1小節目2拍目裏の8分音符の部分ではCl群の中で唯一B音を奏しています。AClがない場合、この小節だけでもClで補充したほうが良いのではないかと思います。
③A&TSaxとHrnは冒頭だけ3声で3小節目までユニゾン、4小節目は3声になります。Hrnの2拍目裏は細かい3連符になりますが、これもどのくらい聴こえて欲しいのか、検討してください。
④Trbは6小節間3声の和音を作っています。3小節目のTrb3は唯一Ges音を演奏しています。バランスに気を付けてください。また5小節目からHrnがこのグループに移行し6小節目2拍目裏から独立した動きになります。Hrnのバランスについては特に気を付けた方が良いでしょう。
⑤BassはPercとも連動しておりバランス的には問題ありません。強すぎないかだけ確認してください。
・D部分同様、①~⑤のそれぞれのパートでバランスを取ったうえで、合奏のバランスを整えてください。
・6小節目のcrescは各部分で始まりの位置が違います。正確にcrescを始めてください。
さらにスキルアップしたい奏者のみなさんへ
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