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坂本文郎氏による2022年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ.:やまがたふぁんたじぃ~吹奏楽のための~の楽曲分析です。
それでは、部分的に解説します。
冒頭~10小節目まで
・真室川音頭のメロディを篠笛風に演奏しています。ここはテンポを気にせずできるだけ自由に演奏する方が良いでしょう。自由なsoloに他の楽器を合わせるのが指揮者の役割になると思います。1小節目は2拍目のG音を確認してSleigh BellとGlockenに合図を出します。2小節目と4小節目もそれぞれD音とG音のdecrescを確認して合図を出します。
・4小節目はCl.のcresc.の頂点に、5小節目のFl.soloの合図を出します。Fl.soloと共に指揮者はCl.のdecrescとSaxのcrescによる音色の変化を確認しましょう。Sax.の頂点は3拍目の裏のアクセントの位置です。Cl.より一瞬早くSaxとSleigh Bellが入ります。Flsoloも3拍目裏は音がなくなりますので、この一瞬がSaxとSleigh Bellだけになるように注意深く練習してください。
・5小節目4拍目はSaxが引いてClのトリルの和声が増幅していきます。ここはClの音色が増してくる変化を聴かせてください。また、Cl2はdivになっています。これはClのF音とC音の音量バランスを一致させてほしいというメッセージだと思われます。
・6小節目3拍目はCl、7小節目3拍目はTrpとマラカス、8小節目頭はSaxにcrescの山があります。7小節目頭のSleigh Bellも含めて、音色の変化を丁寧に聴かせてください。それぞれの楽器の入りと山、音の終わりには、指揮で合図を出したいものです。
・9小節目4拍目裏の低音の音型はEs音As音の2種類の音でスタートしています。Es音スタートがやや薄いのが気になります。特にFgやAclがない団体の場合、木管のEs音がなくなってしまいますので代替を考える必要があります。
・6~9小節のマラカスの奏法をどのようにしたいのか考えた方が良いと思われます。少なくとも山になる7小節目3拍目がTrpの山と一致することは必要です。曖昧にならないように練習してください。
・10小節目のTamTamの音色もいろいろ試したいものです。何で叩くのか、どこを叩くのか、いろいろ工夫してください。
11~26小節まで
・11・13・15・17・19・21・23・25小節目のCl&Fl&Ob&ASax1の音型に注目してください。まず強弱が変化します。次に11&13&19小節はユニゾンで、それ以外は2声部に変わります。しかも2声部の組み合わせが変化していきます。音色は毎回変わると考えていいと思います。またバランスも全部チェックするつもりになってください。25小節目はF音スタートがFl.2だけですので弱くなりすぎると思います。
・アウフタクトを含めた12・14・16・18・22・22・24・26小節の同じリズムのパートも同様です。12・14・18・20小節はユニゾンですが、残り半分の小節は2声部でやはり組み合わせが毎回違います。木管と同様、音色の変化に気を付けてください。
・15・16小節のこの音型は全て2声部なうえにTrpとASax2・TSaxも加わってきます。ここははっきりとfが表現できると良いでしょう。
・8回ある低音部の8分休符と8分音符が組み合わさる音型に注目してください。全部ユニゾンですが、音量変化がない形、cresc、decrescとディナーミクの変化があります。またTimpの音量はそれに連動した形です。注意深く練習してください。
・19小節目からのClとASax1の主旋律(真室川温度)ははっきりと主役になってください。強弱記号にもはっきりと表れています。ただしユニゾンですので音程には気を付けて。
27~34小節
・メロディと8分音符のスタッカートに分かれています。8分音符のスタッカートは最初の4小節がC・D・Gの3声、次の4小節にF音が加わっています。まずはそのバランスですが、後半の4小節に加わるF音はHrn3の1パートのみです。前半4小節との違いはこの音にありますので、バランスが弱くならないように気を付けてください。
・前半の4小節はメロディが低音部です。スタッカートパートを上回る音量を確保してください。後半は立場が逆になり、メロディがかなり強くなります。前半と後半のメロディ・スタッカートのバランスをしっかり比較してください。
・30小節目4拍目裏からの低音は、合いの手を入れるような感じで少し飛び出すのが良いでしょう。
・34小節目のcrescは全員で一斉に行いたいものです。SDの作るcrescに連動させる方法もありますが、難しい場合は4拍を数えそれに乗ったようなcrescを指示すると揃っていくと思います。
35~40小節
・35~37小節の頭はお囃子のイメージでしょうか。Percはそれまでより表に出るイメージで差し支えないと思います。全体としてfとffの音量差を明確にした方が良いでしょう。Percはその他、SDの2回あるp➡fやffへのcresc、管楽器の音がなくなった後のTimpとBDのsoloをしっかりと表現しなければなりません。37小節目の頭の8分音符は鋭く短い音を狙ってください。
・35~37小節の主要な高音部の音型は完全4度の平行で2声部に分かれています。この音量バランスはできるだけ等しくしてください。低音の1拍半のリズムも同じく完全4度ですが、D音の方が少なくなっていますので気を付けてください。
・37小節の16分音符と8分音符のリズムはユニゾンです。音程には気を付けてください。3拍目裏からの4分音符と8分音符の音型は2声部に分かれていますので音量のバランスに注意してください。
・38小節目の16分音符が連続する音型のパートはほとんどユニゾンですが、最後の2音だけ高音部と低音部が分かれています。音量がしぼんでしまわないよう気を付けてください。
・39小節の1~2拍目は、突然今までにない4声に(メロディも含めると5声に)なります。さらにその後の3~4拍目も4声です。最後の音で通常の4度を基本にした3声に戻りますが、この片かは大変重要だと思います。メロディを含めるとかなりぶつかる音が出てきますので慎重に響きを作る必要があると感じます。また3~4拍目のTrp3とASaxに注目してください。8分音符の動きの部分は4度で作られていますので均等に響くように気を付けてください。
・40小節目の全音符の和声は落ち着いてG・C・Dの3声部を均等に響かせてください。木管やPercと連動させて全員でcrescを作りましょう。
41~51小節
・まず41小節頭のPercに注目してください。木管楽器の8分音符とPercの打音を確実に揃えなければなりません。繰り返しタイミングを合わせる練習をしましょう。またこの瞬間にD音はTrp1とHrn3、C音はTrp2とHrn2しか演奏していません。響きを完全に作るのは無理な人数ですが、少しでもこの音が聴こえるように工夫してください。
・メロディは低音のユニゾンで始まり、46小節からのTrpもユニゾンです。音程に気を付けてスッキリ聴こえるようにしたいものです。
・41~44小節のリズムはメロディ以外のすべての楽器です。16分音符のある木管は2声部。これはD音・G音を演奏しているTrp・Hrnとも同じと考えていいと思います。だとすると気になるのはC音のTrp2とHrn2が少なすぎることです。できるだけ増強するようにしたいものです。Percは打音を揃える場所ばかりです。演奏のキレを良くするためにも繰り返し練習してください。
・45小節は全員によるユニゾンになっています。合いの手の効果がffで出来れば良いので、人数を絞って音程のリスクを回避するのも一つの方法だと思います。
・46小節アウフタクトからの木管の16分音符の動きはClがユニゾンでFl・Obが2声部目を受け持つようになっています。44小節までの2声部の作り方とは違いますので、響きの変化に注意を払ってください。
・46小節アウフタクトからのHrnは全ての和声がC・D・F・Gの4音で構成されています。コンスタントに4音での響きが作れるようにしてください。
・46~51小節、Hrnと類似した8分音符の動きのXyloですが、奏者にとって困難と感じられる部分が多いように思います。可能であれば2人の奏者で演奏した方が良いのではないでしょうか。
・48・49小節のTrpのG音は終わるタイミングがパートによって異なります。これは確実にdecrescを表現してほしいというメッセージではないかと思います。この表現と重なるようにTSaxとHrn1はcrescの形でG音を演奏します。G音については音色が変化していく様を表現したいと考えます。しかしより大切なのはTSaxと同時にスタートするASax2のC音、さらに1拍遅れるASax1とObのCis音です。C音とCis音のぶつかりを強調したうえで、頂点となる50小節3拍目の位置でCis➡D音に広がる響きを主張させたいと考えます。この頂点はSus Cymbalも揃えたいと思います。そしてその後のdecrescはSax・Ob・Hrnと木管の16分音符を同調させたいと考えます。ただ52小節目に残るClはさらにdecrescがありますので、音量をどこまで落とすのか計算する必要があります。
・51アウフタクトからの低音の音型は45小節のユニゾンの合いの手とも一致します。揃った他パートのdecrescの動きの中から浮かんでくるようにしたいものです。あまりecrescできない事情がある中ですので、どのようなdecrescにするのかを考えた方が良いように思います。私なら50小節目4拍目である程度落としておいて、後のdecrescは木管の音が低くなる動きに任せます。
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