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坂本文郎氏による2022年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ.:やまがたふぁんたじぃ~吹奏楽のための~の楽曲分析です。
★ 128~139小節
・128小節アウフタクトから始まるCl.のメロディはユニゾンになっています。アウフタクトの部分はdecrescがありますが、上行形でもあるし、あまり気にしなくてもいいでしょう。Clパートの人数にもよりますが、135・136と138・139小節のFl・Obとのバランスは考えた方が良いと思います。
Trp・Trbは4度を基調とした和声ですが、Clの延ばした音に重なるFl・Obは西洋的な和声になります。135小節はGmコード、138小節はFコードになっています。この曲の場合の西洋的な和声はしっかり響かせて変化を表現してください。このFl・Obと同時に奏するのがSleigh Bellです。一緒に音作りをする練習をしましょう。
・128小節からのTrp・Trbは1拍半×4のリズムで和声を奏でています。128小節では127までの同じ音の和声にTrbがEs音を加えていることが面白みになっていると思います。したがってTrbが奏している音は若干強いバランスになってもいいかもしれません。ただHrnが加わる134小節のC音は強くなり過ぎないように気を付けてください。137小節ではHrn
がB音、TrbがC音に分かれますので、響きは微妙に調整してください。もう一つこれらのパートの和声が変わるポイントにTriglのアクセントがあります。どんな音が適切なのか慎重に選んでください。
・この部分のGlockenはほとんどsoloのような動きをしています。マレットの選択が大切だと思われます。
★ 140~150小節
・140~147小節はSoloの掛け合いになります。メロディはObとHrn1のオクターヴで始まり、144からはObとCl1・BassCl・Fgの2オクターヴになります。140と141のFgはHrn2と同じになっています。1本だけになる部分は、140~142のHrn3、141~143のCl1、142~143と144小節2拍目頭のB音のFgです。この人数バランスについては頭に入れておきましょう。
・148小節からのリズムは拍の頭を演奏するBarSax・Cbのpizz・Snare offのSDのdecrescと協調してSaxとCl2の4声を演奏させましょう。
★ 151~166小節
・151~154小節のTrpのSoloと155~158小節のFl・Clのメロディに対するTrbとSaxの和声は4度基調ではなく素直な和音です。協和音を明るく響かせてください。そして、両者の音がなくなる位置にGlockenのオクターブが4度基調の下行形で演奏されます。このGlockenは主役と考えてもいい役割です。慎重にマレットを選び、音色を工夫してください。
・159~162小節のFlの飾りは、小節の頭が他の楽器とユニゾンになりますから音程に十分気を付けてください。
・159~166小節はB・C・Es・Fをリズムを詰めながら奏しています。164小節まではcrescにならないよう気を付けましょう。165~166小節のcrescは165より166を強くするだけで効果が出ると思われます。165小節で奏する人数を減らしておくのも一つの方法です。ただオクターヴ下に加わるTuba・CbとPercは166小節をcrescして効果を出してください。
★ 167~174小節
・この辺りから終わりに向けたクライマックスになります。この花笠音頭をお祭りのつもりで盛り上げたいものです。
・全体の和声は3度基調の西洋的な和声です。それがGrandioso的な効果を与えていますので、響きのバランスを整えることが大切です。メロディは高音部中心で人数も確保されていますので埋もれてしまうことはないと思います。和声を聴かせる2分音符のパートのバランスを整えながら、メロディに次いで強調したい音がどこにあるかかんがえてください。第1に168小節2拍目からのTrp3とHrnのグリッサンドからの動き…特に170小節の8分音符のアクセントは強調したいですね。次にCbのシンコペーションの動きです。2拍目の裏から次の小節に向かう時、音が変化する場合が多いので少しアクセントをつけるように意識するのが良いと思います。もう一つはSDの16分音符です。これは全体の盛り上がりの中でもはっきり主張させるようにしてください。
★ 175~182小節
・175小節頭の和声は西洋的な和声から4度基調の日本的なものに戻ります。C音がかなり多い上に木管の16分音符もC音から始まります。それに対してF音はHrn2とTrb3だけ、G音はHrn4とTrb2だけです。西洋的から日本的に和声が変化する場面でもありますので、何とか増強して響きを作りたいものです。
・182小節まで金管と低音の和声はC・F・G音のまま変わりません。HrnやTrpが加わり音が高くなって、さらにcrescになりますが、音量の変化があっても響きが変わらない点をしっかり確認して演奏してください。
・木管楽器の16分音符の動きは2小節毎に変化があります。変化がどこにあるのかわかるような演奏を心掛けたいものです。175小節にユニゾンで始まりますが、177小節には4度上に音が加わり2声の動きになります。179小節では新しい音色としてFlが、181小節ではObと高音部にPicc・EsClの音色が加わります。音色変化という意味では和声部分にもHrnが加わり、Trpが加わっていますので、ここは音色の変化を如何に聴かせるかが大切だと思います。音色を変える瞬間にSDの音が合図のように聴こえます。
★ 183~194小節
・C・F・Gの3声が続いていましたが、183小節の頭はF音がなくなります。少し抜けが良くなるはずです。3声と2声の違いを確認してみてください。
・高音部はB・F音からスタートする2声、186小節からはCes・Gesスタートの2声になります。それに対して低音部はC・Gの2声でスタートし、186小節からはDes・As・Cesの3声スタートになります。比較すると4度基調ではありますが音の組み合わせが目まぐるしく変わります。まずはこの6小節間で変化の様子を感じてください。スタッカートのリズムで動く点はそのままです。3小節で半音上がる形になっていますが、その変化の合図をCymbalとBDが出しています。SDはやはり16分音符の動きを強調してください。
・183小節からの6小節はSDを除くと2つのグループの絡みでしたが、次の6小節はTrb・Eup・Tuba及び低音のグループとOb・Sax・Trp・Hrnのグループ、さらにFl・Picc・Cl・Xyloの3つのグループの絡みにCb・Timp・SDの16分音符のリズムが加わっています。3つのグループはそれぞれ2声の動きになっていて、より絡みが複雑になっています。3小節後の192小節から半音上がるのは同じですが、全体がスタッカート中心ではなくなっていて、それが183小節からの6小節との変化になっています。
・186~188の3小節と192~194の3小節は低音パートが3声になりますが、Ces音を奏しているのはTrb1だけです。音が埋もれてしまわないように気を付けてください。
★ 195~200小節(最後)まで
・先ず195小節の冒頭に注目してください。TimpとBD以外に音はありません。もう一ヶ所Percだけの音になる120小節同様強く鋭いff(ここはsffz)が要求されています。貧弱にならないように特に気を付けてください。
・195~200の頭まで全てユニゾンになっています。音程に気を付けるのは当然ですが、アクセントやffp、cresc等ディナーミクを表現しなければなりません。同じ音しかありませんので、表現を明確にするために人数調整をするのはありではないかなと考えます。
・Percは196のCymbal、197のTimp、198のSDの入りの音(ffp)を主張させてください。199の頭はSDのrim shotでffの締めくくりをします。
・最後の2音は2声です。fffにアクセントとこの曲の最強音です。ユニゾンの後でそれぞれの音の人数は減りますので、Percも含め最強になるよう心掛けてください。
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