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坂本文郎氏による2024年度 吹奏楽コンクール課題曲「メルヘン」の楽曲分析です。
指揮者の目線から楽曲分析を行なっています。
日々の練習に参考にされてください。
H〜Iまで
・1~3,6,7,9~11小節は3声か4声の比較的単純な和音で進行します。メロディに当たるCl1,ASax1やACl,TSaxに見られる2度上下しながらの進行に注目してください。非和声音をぶつけて3拍目に解決させる形の連続です。不安定な響きが3拍目で美しく響くか検証してください。
・和声が解決する美しい響きの合間に、6小節1拍目のA音、8小節1拍目のD音、10小節1拍目のFis音が単独で登場します。切れよく奏するためにも音程には十分気を付けてください。8小節目は1拍目裏からのスケールもユニゾンです。
・交互に登場する和声とユニゾンの終結部分のような印象で11~14小節が奏されます。響き作りは入念に行ってください。Trpのミュートは響きの中に溶け込みながらも存在感があると感じられる物を選ぶと良いでしょう。14小節1拍目が頂点になりますが、H音は前小節からタイで伸びているEupだけで、和声的とは言えないバスのCis音は強調されすぎますので、バランスに気を付けてください。
I〜Jまで
・1~3小節のPerc、Xylophoneは存在感のあるマレットを選びましょう。Tambourineはリズムが明確に聴こえる奏法にこだわってください。
・1,3小節の素直な3声と比較すると2小節目は全体が5声になっています。As音でスタートする楽器が多い中、Cl3とASax1は1パートのみの動きになっています。5声の中のGes音は重要な音なのですが、1拍目はASax1のみ2拍目はCl3のみになります。響き作りは入念にしてください。
・4小節目は2小節目と同じようなリズムでメロディが動いていますが、4分音符で進行するパートは2拍目までがユニゾン、3,4拍目は2声になっています。ユニゾンの2拍は多すぎて他の動きとの和声が作りにくいですし、pでもありますので、少し減らした方が良いでしょう。
・5小節目からは再び複雑な和音の連続になります。バスやPercを除いたメロディの動きは3声になっていますので、先ずはこのパートだけでバランスを取って響かせる練習をしましょう。
・IとEは比較練習を行ってください。Eの5,6小節に当たる部分がIでは2度上げて繰り返されています。ここからJのテーマのカノン、L・MでのCのmeno mossoの形を変えた挿入句の再現、テーマの完全な終止と長いコーダが演出されていると感じています。
J〜Kまで
・1~8小節全てでテーマの2小節が追いかけてきます。KのMaestosoに向けて展開していく印象にしたいものです。先ずはテーマの展開が徐々に広がっている形になっているかどうか、これらの音だけの練習をしてください。アウフタクトに当たる4分音符3つはどのパートもユニゾンですが、続きの8分音符のある音型は4小節目のOb,Clが2声、6小節目もFl,Piccが加わって2声、8小節目はTrpとASaxで3声になっています。他の小節はユニゾンですので、和声になる部分は音の広がりが感じられるようバランスに注意してください。Trp1が3声目の部分を1パートだけで演奏していることや、4分音符のPicc,Ob,Cl1は少なすぎないか心配です。そんな中、crescはしっかり広げてMaestosoに繋げなければなりません。
・J全体でAClがない場合の補強は必須だと思われます。Fgがなければさらに必要です。
K〜Lまで
・1小節1拍目のTimpは前小節のcrescを受けて、それに見合う音量が必要です。crescの延長でも構いませんが、アクセントのイメージを持った方が良いと思われます。
・メロディは2小節はユニゾンで、3小節目に2声でcresc、さらにTrpが加わってEupやTSaxの2分音符とともに4声に広がり、木管群の3連符、accelと6小節冒頭の頂点に向かって盛り上げます。音の数は広がるのですが各パートの人数は減ってしまいますので、高揚感が演出できるように練習してください。
・5小節目のSDのcrescは効果的です。Crescで全体の音の広がりをリードしてください。
・K全体もAClがない場合のClでの補強は必要です。
・Allegro vivaceに入ったら盛り上がりが必要ですが、冷静にメロディの3声のバランスを取ってください。D音スタートのパートが多過ぎます。1拍目のB音はTrp3にしかありません。F音スタートも少ないように思えます。
・最後の山型のアクセントは短い音ではっきりと演奏しましょう。
L〜Mまで
・直前に切れのあるアクセントで終わった後は空白の2拍(6/8拍子なので)があります。ここはCのmeno mossoを再現していることを忘れないようにしましょう。Cの3小節3拍目から始まる8分音符4つのアウフタクトの最初の音を省略していると考えると6/8拍子が腑に落ちます。しっかり音を切ったらleggieroをイメージして空白の部分に指揮棒を振り下ろしてください。軽やかな音楽に仕上げたいと考えます。
・メロディはずっとユニゾンです。特にpの部分など奏者を減らしてもいいのではないでしょうか。HrnとEupで奏する和声がしっかり響きを持つようにしてください。
・4小節目の付点2分は、次の音が高いためcresc気味になると思いますが、ミュートを付けたTrpを生かすように掛け過ぎないようにしてください。
・7小節4拍目の8分音符は終止の形を取っていません。Mの冒頭で形を変えてもう一度挿入句のテーマが再現されます。終止の音はMの頭の音ですので、余計な間を入れずにMに突入してください。
M〜Nまで
・Grandiosoのようなイメージで挿入句を締めくくろうとしています。締めくくりそうになりながらNで最初のテーマに戻るように見えますが、2小節目からすでに主要テーマが2回再現されています。それを頭に置いたうえでテーマと挿入句のバランスを考えましょう。私はテーマが脇役の役割で良いと思います。脇役だったものがNで主役に変わるというイメージで演奏します。
・1小節目の強弱表記が異なるのは、何故なのか考えてみたいと思います。mfで表記されているグループはGmの和声の響きを作りたいからだと考えます。B音のグループはL部分の終止を決定させるような力強さの役割も担っています。多数であるB音に対してpのグループに同じ音があるもののmfグループにはD音がHrn1のみ、G音はEupのみです。響きも感じられるようにバランスを調整しましょう。
・pのグループにはよりcrescを表現させたいのではないでしょうか。メロディと一体となって挿入句がコラールのような広がりを見せています。主要テーマが2小節目から入って来ますが音量は和声の陰に聴こえる状態で良いと思います。テーマは3小節目にTrbを中心に3声になります。Trb1の音はTSax・EupとAClが重なり、Trb3はFgが重なっています。Trb2の音は他にありません。バランスには気を付けましょう。
・挿入句によるコラールの頂点は4小節目になります。ここからバスのグループのテーマが追いかけて来ます。ユニゾンなので音量にはさほど問題がないと思われます。
・最も気を付けたいのは5小節の木管とSDの音の切れです。次の小節にかぶさることがないよう気を付けてください。
N〜最後まで
・冒頭は、前小節の木管群やSDの細かい音、全音符の伸ばしの音を確実に止めて、Tuba・Cb・Timp・Tamtamだけが聴こえるようにしてください。それを受けて2拍目からdimでテーマが再現されます。ユニゾンですので音程に気を付けてください。
・ユニゾンで始まったテーマは2小節目ですぐに3声になります。3声のまま4小節目までcrescで広がっていきます。1小節目のユニゾンはdimですが、それが3声に変化したときどのくらいの音量で響きが出るのか調整してください。pをあまり意識しすぎると響きが貧弱になる可能性があります。3,4小節で広がりが出せれば最初の音量は多少強めでもいいと考えます。
・2~4小節は同じ和音です。5小節目でB♭に解決し6小節はそのまま、7小節はB♭にC音が加わります。C音は少し強調しても良いでしょう。
・木管群のスケールはそれぞれの最初の音に注目してください。5小節がD音、6小節がF音、7小節がB♭の和声の主音であるB音で始まります。主音で始まってそこからcrescが始まるので終止のイメージが作られるのだと思います。このcrescの始まりをPercも全音符のパートも揃えてください。7小節がC音のパートは入りこそ強調しますが、私はあまりcrescさせずにB♭のコードを強調して曲を締めくくります。
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